このガイドについて
東京大学の運営する FoundX では、資金調達に向けた事業の加速を支援する Founders Program というスタートアップ支援プログラムを提供しています。
たくさんのプログラムへの応募を評価する中で、資金調達に向けた加速するにはまだ少し早く、探索をもっと進めたほうが良いフェーズの方が多いことに気付きました。フェーズで言えば、Customer/Problem Fit もしくは Problem/Solution Fit を検証した方が良いチームです。
そこで本ガイドでは、スタートアップの初期にアイデアを検証しながら、より良いアイデアを探索していくための方法について紹介します。本ガイドが応募前にアイデアを検証するときのヒントとなれば幸いです。
(目次)
たくさんのプログラムへの応募を評価する中で、資金調達に向けた加速するにはまだ少し早く、探索をもっと進めたほうが良いフェーズの方が多いことに気付きました。フェーズで言えば、Customer/Problem Fit もしくは Problem/Solution Fit を検証した方が良いチームです。
そこで本ガイドでは、スタートアップの初期にアイデアを検証しながら、より良いアイデアを探索していくための方法について紹介します。本ガイドが応募前にアイデアを検証するときのヒントとなれば幸いです。
(目次)
想定している対象の方 検証するためのガイド - 前提 - Customer/Problem Fit を達成できているか - Problem/Solution Fit を達成できているか スタートアップの基礎知識を得るための資料 FoundXに応募される方へ 不採択のアイデアによくあるコメント
👨👩👧 想定している対象の方
- 具体的なスタートアップのアイデアをお持ちの方
- 実際にアイデアに取り組んでいる方
✅チェックリスト
まずはフェーズにあわせて、以下の項目をチェックしてみてください。もし自分たちのアイデアでも実行可能で、まだできていない行動や自問自答があれば、一度やってみることをお勧めします。
製品化前のとき
- 業界経験がない場合、顧客インタビューを 30 ~ 50 回程度してみましたか?
- 参与観察などを行って、現場での課題を数日間体感してみましたか?
- 製品を作る前にコンサルティングなどで同様のサービスを提供して、顧客から反応を得てみましたか?
- プロトタイプや MVP を作って、顧客から反応を得てみましたか?
- ユーザーコミュニティを作って、ユーザーからの意見を吸い上げてみましたか?
- エンジニアでない場合、共同創業者候補のエンジニアと何度も話していますか?
製品化後のとき
- 1人でも良いので、とてもサービスを愛してくれている人はいますか? どういった人で、なぜそんなに愛してくれているのかを言えますか?
- 製品を作らなければ気付けなかったことはありますか?
📚 検証するためのガイド
FoundX Online Startup School から抜粋しています。多くの動画は FoundX Online Startup School 登録者のみ閲覧できます(これを機にFoundX Online Startup Schoolに登録してぜひ動画をご覧ください!)
前提(動画をすべて見るのに20分ほど)
前提(動画をすべて見るのに20分ほど)
- スタートアップのステージ(Youtube動画)
- Customer/Problem Fit から Product/Market Fit に到るまで、何をするべきかをまとめています。
- バーニングニーズを見つける(動画です。Online Startup School登録者は閲覧できます。)
- あなたは消費者向けではなく、B2Bの領域での企業を考えています。 では、 皆さんが解くべき顧客の課題とはどのような課題なのでしょうか。
スタートアップの1番の無駄は、 解決する必要の無い課題に対する解決策を作るのに時間をかける事です。 こうした事態を避ける為に慎重に課題を選ばなければなりません。
逆に言えば課題の選定さえ 上手く行けば顧客は続々とやってきます。
そこでバーニングニーズを見つけるようにしてみてください。
バーニングニーズとは切迫しているニーズの事です。 顧客の髪の毛から火が出て燃えているような状態を思い浮かべて下さい。 そんなときは近くにあるものがレンガのようなものであっても手に取って必死にその火を消そうとするでしょう。
それぐらい切迫したニーズを見つける事ができればスタートアップが最初に作るような質の低いプロダクトであっても顧客は喜んでそのプロダクトを解決策として活用してくれます。 - 参考情報 顧客のBurning needsを解決する(Ryo Chikazawaさんの記事)
- あなたは消費者向けではなく、B2Bの領域での企業を考えています。 では、 皆さんが解くべき顧客の課題とはどのような課題なのでしょうか。
- 面倒な仕事に注目する (動画です。Online Startup School登録者は閲覧できます。)
- 本当に顧客がお金を払っても良いと思ってくれるような課題を選ぶ事が 最も大事です。 そこで面倒な仕事に注目してみましょう。 面倒な仕事に注目する事で、 課題の選び方が上手くなります。
みなさんも面倒な仕事はお金を払ってでも誰かにお願いしたいと思った事はないでしょうか。まさに、そうした課題を選んで、それを解決する事がビジネスに繋がります。
また面倒そうに見える困難な課題には誰もが手を出したがりません。 なぜならその面倒さや、仕事の大きさの前に恐れおののいてしまうからです。
スタートアップの世界では難しい方が簡単になるという半直感的な事が語られます。 その理由は難しい課題や面倒な課題だからこそ誰も手をつけない割安株になっているからです。 - 参考情報 面倒な仕事の無視(ポール・グレアムの記事翻訳)
- 本当に顧客がお金を払っても良いと思ってくれるような課題を選ぶ事が 最も大事です。 そこで面倒な仕事に注目してみましょう。 面倒な仕事に注目する事で、 課題の選び方が上手くなります。
Customer/Problem Fit を達成できているか(動画をすべて見るのに15分ほど)
- 顧客の行動を描く (2分ほどの動画です。Online Startup School登録者は閲覧できます。)
- 取り組むべきニーズを見極めるには、どうすれば良いでしょうか。
今のニーズに確信が持てないのもしかたありません。ですが不安を解消するまで情報を集めようとするのも非効率です。 逆に、どれだけ情報を集めても満足できないのだから、全く情報を集め無いと割り切るのも無謀です。 検討しすぎず、 検討しなさすぎず、 その中間のどこかに落とし込む事ができれば 良さそうに思います。
従って、 顧客の行動に注目して全体像を描いてみましょう。 顧客を観察した結果やニーズがあると思った瞬間を時系列にまとめていきます。
時系列に行動を描く為の代表的なツールとしてカスタマージャーニーマップがあります。 カスタマージャーニーマップに明確な定義はありませんので、 自分が必要だと思う情報を全て記入していきましょう。
描くこと自体が目的になってはいけません。 描いた後にどのように活用するかが重要です。 例えばそこから仮説を導き出してみましょう。 あるいはここを起点にしてフィードバックサイクルを開始してみるのも良いでしょう。
- 取り組むべきニーズを見極めるには、どうすれば良いでしょうか。
- 仮説を書き出す (3分ほどの動画です。Online Startup School登録者は閲覧できます。)
- みなさんは、解決すべき課題を見つけました。しかし、1人でずっと考えているとこれは本当に解決すべき課題なのかと悩んでしまったり、 このアイデアは本当に有効なのかと不安になったりしてきます。
安心してください。自信が無くて当然です。 全ては、 あなたの思い込みなのです。思い込みの状態のままではいつまでたっても自信を持つ事はできません。思い込みをスタート地点にして、 そこから検証可能な形に変えてあげる必要があります。
そのためには頭で考えているだけでは不十分です。 従って、今考えている課題やソリューションをまずは書き出してみましょう。
紙を使っても良いですし、ホワイトボードでも良いですし、メモアプリに記入しても構いません。頭の中から全て外に出す事が重要です。
次に書き出したものを仮説に変えていきます。
仮説は実験や調査で得られる結果を予想したものです。予想が正しかったのか、正しく無かったのかそれはどの程度 正しかったのかを判断できるように、できるだけ曖昧な部分を避けて記述しておきましょう。
どのような観点で仮説を設定すれば良いか分からないときは、 ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバス等のツールを使うと良いでしょう。 このようなツールを使わない場合は、ユーザー、プロダクト、マーケットの3つの領域に注目して仮説を設定すると良いでしょう。
- みなさんは、解決すべき課題を見つけました。しかし、1人でずっと考えているとこれは本当に解決すべき課題なのかと悩んでしまったり、 このアイデアは本当に有効なのかと不安になったりしてきます。
- 最低 5 人にインタビューする (3分ほどの動画です。Online Startup School登録者は閲覧できます。)
- 皆さんはすでに仮説をいくつか作っています。素早く検証できれば良いのですが、その具体的な方法がよくわかりません。
とりあえずフォームを用意して友達や知人にメッセージを送ったりSNSなどでアンケートを実施したりしたくなりますが、それは最初にやるべきことではありません。
何故ならば、アンケートを実施するためには適切な設問を用意する必要があるからです。今持っている仮説の中から果たして適切な設問が作れるでしょうか。また、アンケートは回答する人が適切に答えられることを前提としていますが、今までにないプロダクトやサービスのアイデアに対して適切に答えられることができる人がどれだけいるでしょうか。それにこれが最も致命的ですが、オンラインでは回答者が答える様子が見えません。仮説を検証する最初の段階では回答者の表情や振る舞いなどから細かな機微をうまく捉える必要があります。それにはオンラインのアンケートは向いていません。
ここで考えるべきは、今持っている仮説は本当に検討するに値する仮説なのかを確認することです。従ってまずは最低五人にインタビューするようにしましょう。
ターゲットとなるユーザーがいなければ、まずは身近な人から話しかけるといいでしょう。思うような答えは返ってこないかもしれませんが、 インタビューの練習にはなります。そこから紹介などを通じて、ターゲットユーザーに近づいていけばいいでしょう。
忘れないで欲しいのは、自分の仮説を検証するためにインタビューするのではないということです。仮説が検証するに値するのかどうかを相手の反応を見ながら自分で確認する、あるいは学習するというスタンスでインタビューに臨みましょう。 - スタートアップの顧客インタビューのやり方(厳選記事) インタビューのテンプレートやインタビューの態度などを紹介しています。インタビューをする前にぜひご覧ください。
- テンプレートを使った課題インタビューのやり方(Youtube動画)
- 顧客インタビュー相手の見つけ方(馬田さんの記事)
- 皆さんはすでに仮説をいくつか作っています。素早く検証できれば良いのですが、その具体的な方法がよくわかりません。
Problem/Solution Fit を達成できているか (動画を見るのに10分弱)
- PSF を達成する (3分ほどの動画です。Online Startup School登録者は閲覧できます。)
- スタートアップの世界は複雑で変化しやすいため、フィードバックサイクルをまわすことは不可欠です。しかし、目安となるものが無いままフィードバックサイクルをまわすのは大変なので通常は中間地点となるマイルストーンを設定します。
最初のマイルストーンでは最低5人にインタビューします。
あくまでも 最低人数なので、 結果に納得出来なければ人数を増やして行きます。ですが、このインタビューを続ければ良いのでしょう。 顧客にインタビューするのはあくまでも学習のためです。何かを売りつけたり、顧客リストを集めたりすることが目的ではありません。
どのような課題を抱えていてどのようなニーズがあり、どのようなソリューションであれば反応してもらえるかを検証するためにインタビューするのです。
ですが、 このような学習に終わりはありません。
インタビューすればするほど 様々な答えが返って来て学習すべき事が増えていきます。 逆によく分からなくなる事もあります。
その一方でスタートアップはビジネスですからどこかで折り合いをつけて 学習を終了しなければなりません。従って、 PSFを達成する事を終了の目安にしましょう。 PSFとはプロブレムソリューションフィットの略で日本語では課題解決フィットと呼びます。 つまり、何らかの課題が見つかり、それを解決するソリューションの糸口が掴めた状態です。 - PSFの目安
- 必要性:「できれば解決したい」ではなく「困っているので本当に解決したい」という内容のものか
- 成長性:ビジネスとして成長出来るような継続性のある集金が可能かどうかを見極める
- 実現性:少なくとも最小限の機能セットを定義して、それを実現する見通しまではたてておきたい
- スタートアップの世界は複雑で変化しやすいため、フィードバックサイクルをまわすことは不可欠です。しかし、目安となるものが無いままフィードバックサイクルをまわすのは大変なので通常は中間地点となるマイルストーンを設定します。
- MVP を作る(3分ほどの動画です。Online Startup School登録者は閲覧できます。)
- 重視したいのは本当にユーザーが欲しがるかどうかです。 従って、具体的な人の反応が分かるものを用意すると良いでしょう。しかも、作るまでや反応を見るまでに時間のかかるものであってはいけません。できるだけ高速に結果が反映するものが良いです。
従ってMVPを作りましょう。 MVPとはミニマム・バリアブル・プロダクトの略語、 最小限に使える製品を意味しています。
使えるという部分は、 検証や学習をするためにあまりコストをかけずに用意できるという意味だと思って下さい。 製品の部分は最も誤解を招く部分ですが、最終的な売り物を指しているというよりも、 検証を補助する道具のような意味だと思ってください。 MVPの目的はあくまでも、 検証結果を得る為にフィードバックサイクルをできるだけ早く一回転させることです。
MVPの事例として最も有名なのがドロップボックスの事例です。 あのプロダクトが簡単に開発できた訳ではない事は簡単に想像できるはずです。 従って何年もかけて、 開発をする前にユーザーからの反応を確かめる必要がありました。
そこで取られた戦略はニュースサイトに動画を投稿する事でした。
動画には創業者であるドリュー・ハウストンがプロダクトを操作している様子が描かれています。 その動画を見た数十万人の人達がプロダクトに興味を持ちサイトを訪問したそうです。
MVPはいくつかの種類があります。 どれが正解という訳ではありませんので自分のプロダクトやビジネスにあったものを選んで下さい。
MVPを作るときの注意点として、まずコストをかけてはいけないということです。お金はもっと大事な事に取っておきましょう。
とはいえ、 コストをかけないとはどれくらいなのか分からないと思います。 そのときは時間を区切るという手があります。 例えば2週間のように区切ってしまえば、時間的にもお金的にもそれ程無駄にはならないでしょう。
繰り返しになりますが、MVPはすばやい検証が目的となりますので、できるだけ反応の良いユーザーを見つけましょう。
最後に重要な事ですが、嘘をつかないようにしましょう。ユーザーを集める事が目的なのではなく、開発に着手するかどうかを判断する事が目的ですので、夢のような話をしていてはいけません。
- 重視したいのは本当にユーザーが欲しがるかどうかです。 従って、具体的な人の反応が分かるものを用意すると良いでしょう。しかも、作るまでや反応を見るまでに時間のかかるものであってはいけません。できるだけ高速に結果が反映するものが良いです。
スタートアップの基礎知識を得るための資料
FoundX に応募される方へ
FoundX の応募の評価基準、ならびに求めるアイデアは公開されています。